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Q025:ゲーム会社に就職するには専門学校と大学どっちがいい?
高校2,3年で、どちらにいくか選択しなければいけない。「少しでも確率のいい方を」と、この質問が上がる。
小中学校で専門学校についてどう教えているのかわからないが、「就職するなら専門学校」と思っている人は多いようである。これがそもそもの間違い。
免許が必要な仕事ならともかく、ゲーム開発の仕事に必要な免許は存在しない。なので、必ず就職に直結するわけではない。ゲームの専門学校はスキルをつけるためにいく所である。
実際の所どうなのか検索してみた。まず、この類の質問・回答が多い『YAHOO JAPAN!@知恵袋』を検索してみる。
『YAHOO JAPAN!@知恵袋』で【ゲーム業界 就職 大学 専門】
上記の検索ワードで検索してみると400件以上の回答がでてくる。
大学推し・専門推し、意見はそれぞれ。自分のハートに響くものがないかまずは読んで見よう。
この際、回答に「こうであってほしい」という願望や「自分も頑張ってるから君も頑張れ」というエールタイプの回答もあるので注意。高校生の質問者が中学生の回答者にベストアンサー出しているようなのもあるが、これでは業界の実情を聞いた意味が無い。
これを見分けるには回答者のID部分をクリックしてプロフィールや過去回答・過去質問を見ると良い。回答者が業界外の人なのかどうかはこれで大体想像できる。
ただ、これだと全体の中の1個人の主観でしかない。
ということで統計のデータを。
検索サイトで【平成21年 デジタルコンテンツ 先端技術 調査研究】
これで検索をかけると、『一般財団法人 デジタルコンテンツ教会』の『デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究報告書』という報告書が出てくる。このPDFを開いてPDFの検索欄に【ゲーム開発者の就労意識とキャリア形成の課題】といれて検索すると、業界内の就労状況のデータが色々とのっている。その中に『(3) 最終学歴』の項があり、そこで学歴比率が調査されている。2009年に605社へのアンケート調査をしたらしい。
http://www.dcaj.or.jp/project/report/pdf/2009/dc_09_03.pdf
(3) 最終学歴
最終学歴は、「大学卒業」が最も多く44.0%、続いて「専修学校卒業」が30.2%となっ
ており、両者を合わせると74.2%を占める(図5.3-02)。日本では、次代を担う開発者の
育成において、大学と専修学校が果たしている役割は非常に大きいことが分かる。
また、「高等学校卒業」は10.7%、「大学院修士課程修了」は9.2%となっており、そ
れぞれ約1 割程度の割合となっている。「高等専門学校・短期大学卒業」は5.0%である。
「大学院博士課程修了」はわずか0.4%と少ないが、高度な専門知識を有する人材がゲー
ム産業に参入することにより、産業の活性化にもつながるであろう。
International Game Developers Association(2005:20)[8]によれば、北米・英国・
豪州における開発者の最終学歴は、「大学卒業」(64.3%)、「高等学校卒業」(18.3
%)、「大学院修士課程修了」(14.4%)、「大学院博士課程修了」(1.7%)、「中学
校卒業」(1.4%)という結果を示している。すなわち、これらの地域の開発者で大学卒
業以上の者は80.4%に達しているのである。それに対して、日本の開発者で大学卒業以上
の者は53.6%に留まっており、26.8 ポイントの格差が生じている。近年、日本において
も大学においてゲームに関する教育が行われてきているが、欧米に比べて高等教育機関に
おける日本のゲーム開発教育と次代を担う人材の輩出は遅れをとっている。
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最終学歴は、「大学卒業」が44.0%、「専修学校卒業」が30.2%のようである。やや大学が多い。
院生も含めれば「大卒以上」は53.4%になるから、半分以上は大学を出ている事になる
電子ゲーム機の業界が誕生してもう30年ぐらいにはなる。業界初期はベンチャー的な会社も多く、即戦力を求めて学歴よりもスキルで採用する傾向があったと思う(といっても、ゲームの専門学校が出来たのは、ゲーム市場ができてだいぶ後からだから、当時の大学生やゲームとは関係ない普通の専門学校生の中から、ベンチャーでも構わないと入ってくれる人から集めていた)。
だが、業界が成熟して各会社の規模が大きくなり、上場企業クラスが増えれば、当然知名度や待遇などの良さから大学生の就活ターゲットにもなりやすい。学力の高い学生の応募が殺到し、さらに企業規模が上がったためOJTなどの社内訓練の余裕もできてくる。大手が大卒に比重を置いていくのは当然といえば当然の流れである。
実際、大手と呼ばれる上場ゲーム企業はほぼ大学一辺倒である。
任天堂などは大卒と専門の採用数などをHPに上げてくれているのでこれをみれば一目瞭然である。
検索サイトで【任天堂 採用実績】
http://www.nintendo.co.jp/jobs/recruit/index.html
これの下の方に『新卒採用実績』の表がある。
これをみる限り、2012年度だと、「大学・大学院121人、高専・短大・専門3人」で、大卒以上で97.5%。大学が圧倒的に有利である。 他の大手ゲーム会社も、就職四季報を見る限りでは、これと似たりよったり。
大手はこのとおり大卒が圧倒的ではあるが、業界全体では大卒は半分くらいという事は、中小では専門比率が多いという事になる。
ゲーム業界というざっくりした単位で「大学か専門か」を判断するのでなく、いきたいゲーム会社で「大学か専門か」を判断しないと、就活の時に青ざめる。
いずれにせよ、進路を決めるのは高3の時。大学いくためにはがっちり勉強しとく必要があるから、「専門いくつもりでいたがやっぱり大学に変更」は難しいが、「大学いくつもりでやっぱり専門に変更」はとくに試験がきびしくないのでいつでも可能。どちらも選択できるという事を考えれば、自分の一推しは「大学いくつもりで勉強」である。
ついでに、個人的な感想としてゲーム業界の歴史を振り返ってみれば
アーケード(ゲームセンター)やPC(パソコン)のゲームはこれよりまえから始まっているが、ファミコンの発売は1983年。ゲームの専門学校ができたのは1990年代半ば(元がプログラム全般の専門学校からゲーム開発教育を取り入れたケースが多いので、始まりがいつかははっきりしないが…)。ファミコン市場が出来てから10年弱はゲームの専門学校というのは無かった事になる。
じゃぁ、それまでは各ゲーム会社は新卒をどうやって採っていたかというと、ゲーム開発以外の大学や専門学校から採っていた。当然ゲーム開発の知識は無いので、社内で育てる事になる。なので、各社独自に新人に仕事をさせながらゲーム開発を身につけさせる方法を確立していった。昨今でいうOJTである。
そこに満を持してゲームの専門学校が登場したわけで、各ゲーム会社ともこれに注目した。
その時、ゲーム会社によって専門学校をバックアップする会社と様子見する会社に分かれた。が、ここでゲームの専門学校は各社からの信頼を勝ち取る事がうまくいかなかった(初期の評判は【ゲーム専門学校から見た風景】のネット検索ででてくる内容を見るといい)。
なので、当初は専門学校を親しくバックアップしていた会社も距離を置くようになる。もともと各ゲーム会社は社内でOJTを確立しているので、無理矢理専門学校から採る必要は無いからである。
これにより
@専門学校と現在も親しいゲーム会社
A専門学校と昔は親しかったゲーム会社
B専門学校とあまり関わり合いのないゲーム会社
3タイプに分かれたわけだが、これらの会社はファミコン市場黎明期からあったわけで、生き残っている会社は皆大手になっている。なので大手の専門からの採用はこのタイプで顕著である。
@は全体の3割くらいは専門学校から採用するし、Aは毎年数名くらいは専門学校から採用するし、Bに至っては専門学校からの採用はレアである。
これが大手は大卒の方が強い理由である(と、俺は思う)。
昨今はソシャゲーが盛況なので中小の参入も激しく、それに伴い専門学校からの採用も増えている。
このまま専門学校の採用が順調に伸びるかどうかは、現在ゲーム会社で働いている先輩達の活躍しだいと思われる。
『ゲーム開発者の生活と意識に関するアンケート2013 (調査結果速報)』追加
『CEDEC』から『ゲーム開発者の生活と意識に関するアンケート2013 (調査結果速報)』が発表されました。
http://cedec.cesa.or.jp/2013/enquete.html
http://cedec.cesa.or.jp/2013/documents/enquete.pdf
2009年から2013年になって専門の比率が大卒を抜いている模様。
だが大卒・修士・博士の大学進学組の比率は48.0%なので、いまだに大卒の方が有利なのは変わっていない。
中小は専門・大手は大卒という傾向は別にゲーム業界に限らずどの業界でも同じである。
なので、市場が産まれた頃は中小が多く専門が多いが、市場が成熟して中小会社が大手会社になってた頃は大卒が多い、は当然である。
昨今はソーシャルゲーム市場が活況だったので、中小企業が大量に参入して専門が増える現象になっていると推測する。
だが、ソーシャルゲーム市場も大分落ち着いてきたので、また新しい主流市場ができるまでは、ゆるやかに大卒の方に寄っていくとも推測できる。
ゲーム史上も産まれてから何十年もたっているので、今後も新しい主流ができる都度に専門⇔大卒の比率が揺れ動く事が何度も起こる。
基本的に大卒有利と考えて、自分が就職する年の市場の状況を推測して、「大学にするか専門にするか」を考えるのがベストかと思うよ。 |
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査2014 速報データ』追加
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2015』追加
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2016』追加
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2017』追加
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2018』追加
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2019』追加
『CEDEC』から『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2019』が発表されました。
https://cedec.cesa.or.jp/2019/outline/enquete
https://cedec.cesa.or.jp/2019/docs/enquete_2019.pdf
あまり変わってないね。大卒と専門卒の差は微差。
今回は男女別も載ってた。
あまり差は無いが、大卒の率は女性の方が多いってのは意外だな。
最終学歴の学問系統はこんな感じ。
あれだ、カテゴリー分けが謎すぎる。
総合領域が36%で一番多いけど、内訳がゲームエンタメ系が35%で他の総合系3つあわせて0%とか、
素直にゲームエンタメ系35%、総合領域0%ってわけないと。高校生が総合領域系が有利なのかと勘違いするぞ。
人文学系もだ。17%もあって3番手だけど、CGデザイナーやサウンドクリエーターが多いデザイン・音楽が14%で、
人文系は3%しかいない。芸術系と人文系にわけるべきだろ。間違って人文系に進む人がでかねない。
なんか悪意を感じるカテゴライズだ。
男女別は以下。
こちらはほぼ差は無いね。 |
『ゲーム開発者の生活と仕事に関するアンケート調査 2022』追加
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リンクの許可の状態
財団法人デジタルコンテンツ協会 |
『デジタルコンテンツ制作の先端技術応用に関する調査研究』中の「5. ゲーム開発者の就労意識とキャリア形成の課題」章内の「(3) 最終学歴」 |
メールで使用許可をもらえました |
任天堂 |
『任天堂』の新卒の採用情報の募集要項へのリンク |
リンクフリーの模様 |
CESA |
『CEDEC』の『ゲーム開発者アンケート調査』のコーナーの各年度のデータを使用。 |
リンクや使用の許可を頂けました |
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